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会員情報
■訃報

 お悔やみ申し上げます。

 勝瑞夫佐子様(6月27日)

【追悼】勝瑞夫佐子さん  下田チマリ

 短歌で鍛えた的確な言葉選びと表現力

勝瑞夫佐子さんが亡くなられた。享年88歳であった。

 勝瑞さんは1935年2月、和歌山県の生まれ。戦時中は徳島に疎開し、戦後は茶、華、書道等、習い事三昧の毎日だったそうだ。そして1953年、女学校卒業と同時に、ご主人となられる勝瑞昌明氏と、周囲の反対を押し切り結婚する。昌明氏は一流の料理人でもあり文化人でもあった。その熱心さを見込まれて、新幹線が岡山に開通した1961年、岡山市内に店を構え一家も移り住むことになった。

 「ほんの2、3日の助っ人を」とご主人に頼まれ、何もわからないまま初めて働きだし、それ以来最後まで割烹の女将であった。その間、臓器不全の病に倒れたご主人の介護を30年近くされ、また店の経営等もすべて彼女の肩にかかった。お逢いするとまるで女学生と話しているようなおっとりと純粋な方で、そんな苦労などみじんも見せなかった。

1989年、龍短歌会入会。1999年、岡山県文学選奨受賞。「万策の尽きしかと石に座りをり月しらじらと白袋を照らす」。この頃の作品は重い。現代詩は坂本明子さんの教室に通ったとお聞きし、県詩集にお誘いしたのがきっかけ。ネビューラに2014年8月発行の38号から今年1月発行の83号まで参加された。短歌で鍛えた言葉選びの的確さと表現力の豊かさは、詩にも発揮されている。勝瑞さんにとって短歌や詩を書くことは救いになったのではないかと思う。自分の発した言葉に自分が慰められ、書くことによって一歩進むこともできる。

今年1月の最後の作品を紹介する。

 膵臓癌の告知を受けた/気分はさわやか/聞き覚えのある落ち葉踏む音/亡夫の迎えか/風音の間に一寸待ってねと叫ぶ/ごくごく普通の娘、孫、曽孫よ/みんないい子です/幸せだった/私は頗る元気よ/今は

「感謝」と題のついた詩。人生の締め括りにありがとうと言えるのは、最高の幸せ。ゆっくりお休みください。



■会員詩書発行

5月 ・秋山基夫評論集 「オーラル派」詩朗読の実行と理論(稿) 私家版 

6月 ・北岡武司翻訳小説集 「嘘とまこと」(ハインリッヒ・フォン・クライスト著 澪標


■会員活動

2月
・ 第37回井原市文学賞現代詩部門入選=かわかみよしこ

・ おかやま矢掛本陣文学賞詩部門佳作=かわかみよしこ

・ 日本詩人クラブ例会IN大阪(大阪市・ドーンセンター)自作詩朗読=瀬崎祐

・ 第6回永瀬清子現代詩賞入選=吉田博子

3月

・ 第18回笠岡市木山捷平文学選奨詩部門優秀賞=妹尾礼子、入選=かわかみよしこ

◆・ 詩パネル展と朗読会(総社市・アトリエ郎女)展示・朗読=石川早苗

・ ニシガワ図鑑「キラキラ燃エル図鑑」(岡山市・西川アイプラザ)朗読指導・演出=下田チマリ

・ 小学生のための詩の教室(同市・御南西公民館)講師=中尾一郎

4月

・ 岡山エッセイストクラブ総会(岡山市・きらめきプラザ)講演会講師=中尾一郎

6月

◆・ 日本詩人クラブ名誉会員=なんば・みちこ

 「詩朗読―あなたと共に」(倉敷市・旧野ア家住宅)自作詩朗読:秋山基夫、河邉由紀恵、斎藤恵子   、瀬崎祐

 小学生のための詩の教室(岡山市・御南西公民館など3カ所)講師:中尾一郎

8月

 どぅるかまら出版記念会(岡山国際交流センター)秋山基夫詩論集、北岡武司翻訳小説集


■日本詩人クラブ大阪例会
 
隠喩めぐり野沢氏が講演

2月
11日、大阪市中央区のドーンセンター(大阪府立男女共同参画・青少年センター)で日本詩人クラブ例会IN大阪が開催された。大会議室の会場いっぱいの70人余りの参加者で、「こんなに大勢とは」という声が聞かれるほど盛況だった。北岡淳子会長も「関西で初めての例会で、こんなに大勢で一般参加者も来られて」と笑顔で挨拶された講演は東京から来られた野沢啓さん。2019年に詩論『単独者鮎川信夫』(日本詩人クラブ詩界賞)、詩集『発熱装置』、21年に詩論集『言語隠喩論』を上梓されている。

演題は「吉本隆明と萩原朔太郎の言語隠喩論」で、次のような講演だった。

詩を書くとは、まだだれもが書いたことのないようなものを書くことで、自分のなかから出てきたことばや、ことばの組み合わせにより、未開拓のことばの可能性を見つけ出すことである。そして、詩を書くことにより新たな世界を見いだし、また創り出すことである。

詩のことばについて原理的な考察をしたものは、これまで萩原朔太郎の『詩の原理』と吉本隆明の『言語にとって美とはなにか』ぐらいしかなく、それを乗り越えたいと『言語隠喩論』を書いた。この書の最大の論点は言語の本質は隠喩(メタファー)であるということである。言語そのものが隠喩であり、詩はことばを発展させて自分にとっても驚きと思うこと、ことばを発することで何か別のものになっていく創造に満ちた得体のしれない世界を書くことである。

言うべきことをことばに置き換えるのは詩ではなく散文である。詩は、ことばをありきたりのことばを含め、初めてのように使い、ことばを新しい経験として生み出すものである。詩は意識で書くのではなく、ことばが意識を超える必要がある。ことばに世界を託し、詩は書かれるべきである、等話された。

第2部では5人の自作詩朗読があり、岡山からは瀬崎祐さんが「不条理な食卓」を朗読した。

講演は隠喩についての学びとなり、盛んな質疑応答もあった。ひさびさに大勢の方に会い、愉しい時間になった。                                          (斉藤恵子)



■20回迎えた清子賞

   小中学生15人表彰

赤磐市など主催の「第24回朗読会 永瀬清子の詩の世界」が2月18日、同市くまやまふれあいセンターで3年ぶりに開かれました。20回目を迎えた永瀬清子賞の表彰や講演が行われ、学校関係者らが出席しました。

 新型コロナウイルス感染症のため2年間開催できず、市永瀬清子の里づくり推進委員会委員長の友實武則市長が「再開できてうれしい。心と心がつながり、一つになれれば」と挨拶。

 賞には小学校下学年、上学年、中学生の部に、市内外の26校から詩588点の応募があり、優秀賞、佳作、奨励賞の計15人を表彰。優秀賞に選ばれた赤磐市立山陽北小6年勝田陽向さんら3人が自作を元気よく朗読しました。

 後半ではノートルダム清心女子大学の綾目広治名誉教授が「萩原朔太郎と永瀬清子新たな世界を拓いて」と題して講演。戦前や戦後間なしの詩は情緒的なものが多い中「2人には思想があり、朔太郎は清子を高く評価した」と指摘しました。さらに、清子には「母性があり、社会弱者に目を向けた」と強調しました。

 翌19日には、同市にある清子の生家で、命日にちなむ第4回紅梅忌と第6回永瀬清子現代詩賞表彰式がありました。受賞は福岡県、吉岡幸一さん。                     (柏原康弘)






   
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